クワガタは、見た目が似ていても、種類によって世話のしかたがちがいます。暑さに強い虫もいれば、すずしい場所が必要な虫もいます。冬をこせる虫と、秋ごろに一生を終える虫もいます。
最初につまずきやすいのは、クワガタをひとまとめにして調べてしまうことです。このページでは、種類ごとのちがいを表で見くらべながら、家で飼えるか、どんな準備がいるかを考えられます。
どの種類を飼うか決める
種類別データ表では、まず「冬をこせる?」と「ちょうどよい温度」を見てください。冬をこせる種類なら、来年も同じおとなの虫と過ごせることがあります。冬をこせない種類は、おとなの虫でいられる期間が短めです。秋に一生を終えることは寿命によるもので、世話の失敗とは限りません。
次に、たまごを産む場所と幼虫のごはんを見ます。木の中にたまごを産む種類と、土の中に産む種類では、用意するものが変わります。ミヤマクワガタは、ほかの種類よりもすずしい温度が必要です。家の置き場所で温度を守れるかも、先にたしかめましょう。未確認の項目は、資料によってちがいがあるため、無理に決めつけないことが大切です。
成虫と幼虫をくらべる表では、同じクワガタでも実質べつの生き物だと思って見てください。食べるものも、ちょうどよい温度も、世話も変わります。この虫の一生の大半は幼虫の姿です。表の「この姿でいる期間」を見くらべると、成虫を飼うつもりで始めても、ふだんは幼虫の世話をすることが分かります。
| 種類 | おとなの虫でいる期間 | 冬をこせる? | ちょうどよい温度 | 大きさ(オス) | たまごを産む場所 | 幼虫のごはん | 育てやすさ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| オオクワガタ | 24〜36ヶ月 | こせる | 20〜25℃ | 28〜77mm | 木の中(産卵木) | きのこの菌のびん(菌糸ビン) | やさしい |
| コクワガタ | 24〜36ヶ月 | こせる | 20〜25℃ | 18〜50mm | 木の中(産卵木) | 土(発酵マット) | やさしい |
| ヒラタクワガタ | 24〜48ヶ月 | こせる | 20〜25℃ | 18〜85mm | 木の中(産卵木) | きのこの菌のびん(菌糸ビン) | ふつう |
| ノコギリクワガタ | 2〜4ヶ月 | こせない | 20〜28℃ | 21〜77mm | 土の中 | 土(発酵マット) | ふつう |
| ミヤマクワガタ | 3〜6ヶ月 | こせない | 16〜22℃ | 未確認 | 土の中 | 土(発酵マット) | むずかしい |
一年のお世話カレンダー
年間の飼育カレンダーは、自分の種類に合う表を選んで読みます。冬をこせる種類は、おとなの虫が土にもぐって休む時期があります。冬をこせない種類は、おとなの虫が一生を終えたあと、幼虫を育てる流れになります。
同じ月でも、してよいことは種類によって変わります。とくに、さなぎになる前後は土を掘り返さず、静かに待つことが大切です。表を予定表のように使い、虫のようすも見ながら世話をしてください。
| いつ | 虫のようす | やること | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 1月 | おとなの虫(冬ごし中)/幼虫 | おとなの虫は、すずしい静かな場所で眠らせておく。土がかわいていないかだけ見る。 | 暖かくして起こすと体力を使ってしまう。冬に何度も掘り返さない。 |
| 2月 | おとなの虫(冬ごし中)/幼虫 | ひきつづきそっとしておく。ゼリーが減っていなくてよい。 | 冬にごはんが減らないのはふつうのこと。減らないからといって起こさない。 |
| 3月 | おとなの虫(冬ごしあけ) | 動きはじめたらゼリーをあげ直す。ケースをきれいにする。 | 動きだす時期は虫によってちがう。まだ動かない虫を無理に起こさない。 |
| 4月 | おとなの虫(また元気になる) | しっかりごはんを食べさせて、たまごを産む準備をする。 | 冬ごしのあとは体力が落ちている。すぐにオスとメスをいっしょにしない。 |
| 5月 | おとなの虫(オスとメスをいっしょにする) | オスとメスをいっしょにする。たまごを産ませる木は水につけて、皮をむいておく。 | ヒラタクワガタは、いっしょにするとオスがメスをはさんでしまうことがある。短い時間にして、目をはなさない。 |
| 6月 | たまごを産ませる | 水につけた木をうめたケースに、メスを入れる。 | 木がかわいていると産まない。水につけたあとは、水気を切ってから使う。 |
| 7月 | たまごを産んでいる | そっとしておく。1ヶ月くらいでメスを取り出す。 | 何度ものぞくとメスが産むのをやめてしまう。 |
| 8月 | 幼虫を取り出す | 木をわって幼虫を取り出し、1ぴきずつ入れものに移す。 | 早すぎると、まだたまごのままつぶしてしまう。メスを入れてから2ヶ月くらいが目安。 |
| 9月 | 小さい幼虫 | きのこの菌のびん(菌糸ビン)か、幼虫用の土に入れる。 | きのこの菌のびんが向く種類とそうでない種類がある。コクワガタのように土のほうが向く虫もいる。 |
| 10月 | 大きくなってきた幼虫 | 食べたあとが入れもの全体に広がったら、新しいものにかえる。 | かえた直後に落ちつかず動きまわる虫がいる。おさまるまで動かさない。 |
| 11月 | おとなの虫(冬ごしの準備)/幼虫 | おとなの虫の土を厚めに入れ直して、もぐれるようにする。 | もぐる場所がないと冬をこせない。つかまる木を入れただけでは足りない。 |
| 12月 | おとなの虫(冬ごしに入る)/幼虫 | すずしくて暗い場所に移す。あとはかわいていないか見るだけでよい。 | こおる場所はさける。外の物置は、住んでいる場所によってはこおってしまう。 |
| いつ | 虫のようす | やること | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 1月 | 幼虫 | 土がかわいていないか見るだけでよい。あまり動かなくても心配ない。 | 暖かい部屋に置くと早く育ちすぎて、小さいおとなの虫になる。玄関や北向きの廊下など、すずしい場所が向く。 |
| 2月 | 幼虫 | ひきつづき、かわいていないかだけ見る。 | 寒い時期はあまり動かないので、土を新しくしなくてよい。 |
| 3月 | 幼虫 | さなぎになる前の、最後の土の入れかえをする。 | 4月からの入れかえは「さなぎの部屋」をこわしてしまう。かえるならこの時期が最後。 |
| 4月 | 幼虫〜さなぎになる前 | ケースを動かさない。土もかえない。 | さなぎの部屋(土の中に作る、さなぎで過ごすための空間)をこわすと、羽がのびないまま育ってしまう。掘り返さない。 |
| 5月 | さなぎ | そっとしておく。ゆらさない。 | この時期に掘り出すのがいちばんの失敗のもと。姿が見えなくても大丈夫。 |
| 6月 | さなぎ〜おとなの虫になるころ | 待つ。ケースの横から見えることもある。 | おとなになったばかりの虫は体がやわらかい。さわると形がくずれてしまう。 |
| 7月 | おとなの虫(ごはんを食べはじめる) | 土の上に出てきたら昆虫ゼリーをあげはじめる。つかまる木を入れる。 | おとなになってもすぐには食べない。自分から出てくるまで掘り出さない。 |
| 8月 | おとなの虫(いちばん元気な時期・たまごを産む) | たまごを産ませるなら、土を深く入れてオスとメスをいっしょにする。ゼリーを切らさない。 | 日なたに置いた場所や、しめきった車の中は、短い時間でも危ない。 |
| 9月 | おとなの虫の終わり/たまご〜小さい幼虫 | おとなの虫を別のケースに移し、たまごの入った土はそのままにしておく。 | おとなの虫がいなくなるのは寿命であって、お世話の失敗ではない。いっしょにしておくと、たまごをつぶしてしまう。 |
| 10月 | 小さい幼虫 | 幼虫を見つけて、1ぴきずつ別の入れものに分ける。 | 小さいうちは体がやわらかい。手でつままず、スプーンなどで土ごとすくう。 |
| 11月 | 大きくなってきた幼虫 | 土を新しくする。フンが目立ってきたら入れかえの合図。 | フンばかりになった土は、もう栄養がない。そうなる前にかえる。 |
| 12月 | 幼虫 | かわいていないか見る。あとは春まで、ほとんど手をかけなくてよい。 | 水を入れすぎるとカビや小さいハエのもとになる。にぎって形が残るくらいがちょうどよい。 |
そろえるもの
用品表は、最初から全部を買うための表ではありません。自分の種類が、たまごを木の中に産むのか、土の中に産むのかを先に確かめましょう。産む場所がちがえば、必要な用品もちがいます。
成虫を飼うためのケース、ゼリー、土、転びにくくする木の皮や小枝は基本の準備です。その先に、産卵用の木がいるか、深くしいた産卵用の土がいるか、幼虫に菌のびんが向くかを選びます。買い足す前に、かならず自分の種の行を見直してください。
| いるもの | なんのため | えらび方 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 飼育ケース | 虫を飼う入れもの。 | 1ぴきなら横はば23cmくらい、2〜3びきなら30〜37cmくらいが目安。ふたのあなが細かいものは、小さいハエが入りにくい。 | ヒラタクワガタのように気の強い虫は、たまごを産ませるとき以外は1ぴきずつ分ける。 |
| 成虫用マット(床材) | ケースの底にしく土。しめり気をたもって、かくれる場所になる。 | 深さ5〜10cmが目安。にぎって形が残り、水がしたたらないくらいにしめらせる。 | 幼虫を育てる土とは別のもの。おとなの虫用は、栄養よりも「しめり気」と「もぐりやすさ」でえらぶ。 |
| 昆虫ゼリー | おとなの虫の主なごはん。 | 売っている昆虫ゼリーで足りる。種類をえらぶことより、切らさないことのほうが大事。 | スイカのような水分の多いくだものは、おなかをこわしたり小さいハエがわいたりする。主なごはんにはしない。 |
| 餌皿 | ゼリーを固定して、土にうまらないようにする。 | ゼリーのカップがはまるくぼみのあるもの。つかまる木をかねた形だと使いやすい。 | — |
| 転倒防止材(樹皮・小枝) | ひっくり返った虫が起き上がるための足場。 | 木の皮や小枝など、つめが引っかかるもの。 | 起き上がれないまま弱ってしまう事故は、これを入れるだけで防げる。いちばん忘れられやすい。 |
| 産卵木(ほだ木) | メスがたまごを産みつける、やわらかくなった木。 | クヌギかコナラ。使う前に水につけて、皮をむいておく。 | かわいた木には産まない。水につけたあとは、水気を切ってからうめる。 |
| 産卵用マット(深敷き) | メスが土の中に直接たまごを産むための、深くしいた土。 | よく発酵した土を深さ10〜15cm入れ、下半分はかたくつめる。 | 浅いと産まない。木はいらないが、そのぶん土の量と質で決まる。 |
| 発酵マット(幼虫用) | 幼虫のごはんそのもの。 | きのこマット・完熟マットなど、幼虫用として売られているもの。 | 入れかえの目安は3ヶ月くらい。フンばかりになってからでは遅い。 |
| 菌糸ビン | きのこの菌を回した土のびん。幼虫を大きく育てられる。 | その種類に合うか確かめてからえらぶ。オオクワガタ・ヒラタクワガタなどが向く。 | 土よりも大きく育つが、向く種類は限られる。土のほうが向く虫に使っても、あまり意味がない。 |
| 越冬用の深いマット | おとなの虫が冬にもぐって過ごすための、厚くしいた土。 | 虫がすっぽりもぐれる深さまで入れる。 | もぐる場所がないと冬をこせない。つかまる木では代わりにならない。 |
| 冷却設備(ワインセラー・冷房) | 夏の部屋の温度を、その虫が耐えられる温度より下げておくための道具。 | 温度を一定にたもてるもの。温度計といっしょに使って、実際の温度をたしかめる。 | すずしい山にすむ虫は、日本の夏を部屋の温度のままでは過ごせない。これがあるかどうかで飼えるかが決まる。 |
| 温度計 | 虫を置く場所の、本当の温度を知る。 | 部屋ではなく、ケースを置くその場所に付ける。 | 部屋の温度と、日の当たるたなの上の温度はちがう。守れているかは、はかってみないと分からない。 |
クワガタを飼う前に、種類、置き場所、夏の温度、冬をこせるか、たまごを産ませるかを決めておきましょう。ここが決まると、必要な用品と年間のお世話が見えてきます。
表を見て、自分の家で続けられる種類を選ぶことが、長く楽しむ近道です。分からない点は決めつけず、虫のようすをよく見て、無理のない環境を作ってあげましょう。
出典
本文の数値は次の資料を参照しています。飼育データは出典によって幅があるため、本文では幅のまま示し、確認できなかった項目は「未確認」と記載しています。
- https://kids.yahoo.co.jp/zukan/pet/beetle/jstagbeetle/
- https://blog.mushi-ichiba.com/archives/34
- https://www.beetle-farm.com/hpgen/HPB/entries/5.html
- https://kuwakabu.tsukiyono.co.jp/manual/kuwagata/larva/kinshi-breeding/
- https://www.bepal.net/archives/256270
- https://www.tcaeco.ac.jp/contents/animalbook/small-stag-beetle/
- https://www.komeri.com/contents/howto/html_new/04370/
- https://insect.body-design.org/nokogirikuwagata-siiku/
- https://www.choublog.site/nokogirisodatekata/
- https://br-choku.com/column/miyama-kuwagata-care-guide
- https://www.mushikichi.com/blog/lucanus-maculifemoratus/
- https://kuwakabu.tsukiyono.co.jp/manual/kuwagata/imago/
- https://www.dcm-hc.co.jp/howto/guide/g_pet/20200513152532.html
- https://kuwakabu.tsukiyono.co.jp/manual/kabutomusi/kabuto-larva/


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